第1章 であい

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―――――西暦2XXX年 世界は度重なる戦争を繰り返し、大地は貧困に苦しみ、いつしか空に太陽が昇らなくなった。 数多くあった国も1つに纏められ、大帝國が出来上がった。 それを成し遂げたのは、たった一人の男。 その冷酷非道かつ至極残虐的な行動ゆえ、男はかの有名な『牛魔王』の二つ名で呼ばれるようになった。 それは今から8年前の話。ある意味残酷な伝説。 貧困に苦しむ人々に救済の手も差し伸べず、弱肉強食の世に仕立て上げ、完全に牛魔王の支配する世界となってしまった今。 だが、かつては中華民国と名乗っていたその場所で、新たな伝説が始まろうとしていた。 前・中華民国、現・ダストスラム。 堕落した貴族のものや、貧困に苦しむもの、犯罪を犯して軍兵から追われるもの、所謂厄介払いされたものたちが住んでいる其処は、住居はひびが入り、電気も通っているかさえ不明な場所だ。 ところどころには半壊した家などがあり、其処では小さな露天を開き生計を立てているものもいる。 男は幼いころから見慣れたその場所を、丸腰状態で歩いていた。 此処では犯罪は頻繁に起こる。 故に身を守るための武器を住民達は皆所持しているのが普通だ。 まして出歩くときは、細心の注意と武器の確認を怠らない。 男の容姿は目を引くもので、カチューシャで前髪ごと押し上げた髪型で、髪色は根元から毛先に向かい金からオレンジのグラデーション。 すらりと伸びた鼻筋に、薄めだが形のいい唇。 つり目だがやや下がり気味の眉をきゅっと寄せた。
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