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目の前に現れた少年はまるで鏡で写したようにそっくりそのままの俺の容姿をしていた。
「んー?やけに冷静だよな。さすが俺って感じか。あははははっ」
酷い頭痛が治まりゆっくりと立ち上がり拳を握る。
足に絡まった配線など気にしている場合では無い。
今は目の前のふざけた野郎が何者なのかが知りたかった。
「何笑ってやがる…」
地にしっかり足を付け、暗闇に浮かぶ偽大河の瞳孔を睨み付ける。
そして一歩足を踏み出し威嚇するように叫ぶ。
「お前は誰だ?!」
「はぁ?まだ分かんないのかよ。俺はお前、お前俺…。顔も一緒、声も一緒、なにもかも全部一緒。違うところをしいて言うなら…心だな」
偽大河は自分よりも下司な相手を嘲笑うかのように薄笑いを浮かべ、自らの胸を右拳で二回叩いた。
「心…?」
「そう、心だ。なぁ大河ぁ。お前も薄々気付いてるだろ?俺達は同じなのにこうやって会話している。おかしくないか?普通、心は一つだけだよなぁ」
「つまり、俺は二重人格って事か?それでこの配線がびっしりな世界は俺の心の中…」
「半分正解だ。俺にしては良く出来ました。褒めてやるよ。だがな、二重人格ってのは一つの心に自分とは違う全く別の誰かが生まれる事だ。言うなれば俺達は双子だ。同じ容姿で考え方もだいたい同じ。でもどこか違う」
偽大河は薄笑いを浮かべたままゆっくりと近づいてくる。
その表情は逃げられず怯える脱兎を追い詰める猟師のように残虐な表情だった。
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