壱、女中兼副長小姓

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小夜の指摘に土方ははたと口を閉ざした。いかん、小夜の言う通りだ。 「総司、説明しろ」 せっかくもう少し土方で遊んでいられると思っていた沖田は物足りなさそうな顔をしたが、土方が有無を言わせない目差しで睨んでいたので仕方なくネタばらしに移る。 「つまりですね、小夜は『襲う』という言葉を『危害を与える』という意味に履き違えたんですよ」 「え、違うんですか?」 小夜は焦ったように沖田に詰め寄る。 「小夜、近いよ~。個人的には嬉しいけど」 唇が触れ合うまで、あと三寸(約9センチ)。土方が無言で小夜の襟首を引っ張って元の位置に戻した。 「ちぇ、残念」 「ほざけ」 「何が残念なんですか?」 「ただのこいつの戯れ言だ。気にすんな」 しれっとかわす土方に首を傾げた。彼女の短い髪がサラリと頬に掛かる。土方はそっとそれを払ってやった。 「ありがとうございます」 「気にするな」 「あの、ありがとうついでにお尋ねしたいんですが…」 直後彼女の可愛らしい唇から転がり出た言葉に、男二人は遠くを見る羽目になる。 「襲うって、危害を与える以外に何か意味があるんですか?」 ……仕方ない。仕方ないのだ。二人はそう自分に言い聞かせた。  
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