参、甘味戦争

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ようやく落ち着いたのか、今度は相手が問い掛けてきた。 「あの…ここは新撰組の屯所で間違いないですよね?」 「間違いないですよ」 「ですよね、ちゃんと書いてありますし……」 彼はチラリと門に掛かっている立て看板を確認した。確かに新撰組屯所と書いてある。 「ええと…貴女は誰でしょう?」 「……すみません、先にお名前を聞いてもいいですか?」 困惑している相手に、小夜は申し訳なさそうに言った。名前を聞かれたら先に名乗らせるようにと、近藤に耳にたこが出来るほど言い聞かされていたのだ。 新撰組の敵は多い。女中となれば人質にはもってこいの人材だ。小夜が自分たちの因縁に巻き込まないか、近藤を筆頭に隊士全員が気を揉んでいた。 新撰組事情を察してくれたのか、彼は嫌な顔をせずに答えてくれた。 「そうでしたね、人に名を聞くときはまず自分から。いやはや申し訳ありません。私は新撰組副長、山南敬助と申します」 新撰組副長。 小夜はその時初めて新撰組に副長が二人いることを思い出した。そうだ、彼は今まで出張に出ていて会ったことがなかったのだ。 「新しく女中になりました、小夜と申します。先ほどは無礼を働き申し訳ありませんでした」  
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