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「うぅ…。一体何が起こったんだ」
警鐘村の南西部の棚田地区にある農機具倉庫で一人の男が目を覚ました。
彼は山木一男。
この警鐘村の住民の一人である。
彼は五時間前に棚田で作業をしていた。
が、倉庫内で転倒し今まで気を失っていたのだ。
そして、0時00分、怪異に巻き込まれた。
「何だ。田の水が赤いな」
棚田にも警鐘渓谷と同じ様に赤い水が出ていた。
「これは…、もしかすると。あの伝承か」
あの伝承…。
この赤い水は神の血だとするということだが、この伝承には続きがある。
赤い水は血を流せばその代わりに体内に入り、赤い水が体内に入れば他人の視界を得ることができる幻視が使えるようになる。
さらに赤い水が入り過ぎると、この警鐘村を徘徊する化け物、屍人と化してしまう。
「まさか、本当に伝承が現れるとは」
山木は驚きを隠せないでいた。
棚田には明かりが無い。
しかし山木は暗闇の中でも少しなら目がきくのだ。
常人なら全く何も見えないはずの暗闇に包まれた倉庫の中で安々と倉庫に常備されている懐中電灯を見つけると、山木は外へ出た。
棚田は商業区と県道310号線を南北に繋いでいる。
山木のいる農機具倉庫は棚田の南東、県道310号線への道に近い所にある。
山木は県道の方面へ向かうことにした。
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