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周囲を山に囲まれた村、警鐘村。
この陸の孤島に二人の旅行者がいた。
灘 雄樹、半田 雪乃、この二人は昔からの幼なじみで休暇で警鐘村を訪れていた。
現在23時00分。
二人は静かに眠っている。
これから起こる惨劇を知らずに。
灘はふと目を覚ました。
「うぅ、寒い。トイレ、トイレ」
部屋の外に出、トイレへ向かう。
この村の旅館には部屋にトイレが無いのだ。
「ふー」
用をたし、手を洗おうと洗面台に立ったその時、地面が揺れ、視界が歪む。
「なんだ。これ」
めまいのような感触に灘は足をふらつかせる。
その瞬間旅館中いや村中が停電に見舞われる。
「なんだ。停電か」
灘は壁を探り非常灯を見つけそれを抜き取った。
廊下に出ると非常灯の明かり以外に明かりはなく、真っ暗だ。
灘の足音だけが不気味に廊下に響いている。
下へ降りる階段の前を通ったとき、踊り場で何かがうごめいているのを感じた。
不審に思って踊り場を照らすが何もいない。
「気のせいか」
灘は自分の部屋へと戻る。
部屋に入ると半田の姿が無い。
「おい!雪乃。どこだ」
灘は叫ぶが返事が無い。
そのとき放送が入った。
「現在、村は停電に見舞われております。
旅館内も停電しておりますが、ロビーは非常用の電気が着いています。まだ部屋におられるお客様はロビーにお集まり下さい」
館内に響きわたった。
「ロビーか」
灘は廊下に出た。
階段までくると、踊り場から人が歩いてくる。
「誰だ」
目を凝らすと旅館の料理人だった。
が、様子がおかしい。
足がふらついている。
手には包丁を持っている。
「板前さん?大丈夫ですか」
灘が声をかけると料理人は顔をあげた。
その顔は人とは思えないものだった。
目や鼻から血を流し、顔色は死体の様に青い。
料理人は包丁を振り上げ、灘に襲いかかってきた。
「うわぁ」
腰を抜かしその場に座り込む。
周囲を見渡し武器になるものを探す。
すると、使い古しの蛍光灯があった。
灘はそれを拾い、襲いかかってきた料理人の頭に叩きつけた。
料理人は倒れた。
灘は急いで階段を降り、ロビーまで走った。
ロビーには半田や数人の旅行者がいた。
「雪乃、無事か」
声をかける。
「ええ、どうしたの。そんなに慌てて」
半田が聞く。
灘はこれまでのことを話した。
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