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「何だ。これは」
警鐘村の駐在警官、神棚 秋夫は耳をふさぐ。
彼は、警鐘渓谷の水の流れを確認するために、渓谷の水流監視所にいた。
サイレンが鳴りやんだが、とたんに監視所の電気が落ちた。
「何だ。停電か」
神棚は、懐中電灯を取り出し明かりを着けた。
監視所から外に出た。
辺りは暗く懐中電灯の明かりだけが頼りだ。
「電気設備を修理しなきゃな」
警鐘渓谷には村全体の電力を供給する電気設備がある。
神棚はそれを修理しに行く気なのだ。
電気設備にたどり着くには、監視所を出て一度渓谷の一番上まで登り、橋を渡って向こう岸にある、少し小高い丘にある鉄塔の下の小屋まで行かなければならない。
「さて、行くか」
神棚はまず渓谷を登る梯子へ向かった。
が、途中で銃声が鳴り、神棚の足元に銃弾が当たった。
「誰だ」
とっさに携帯していた、拳銃を取り出す。
しかし周囲には誰もいない。
また銃声がした。
神棚は危険を感じ、近くにあった岩の窪みに身を隠した。
銃声が止み、神棚は安心する。
ふと渓谷を流れている渓流を見た。
そこには何かの生き物の血のような赤い水が流れていた。
「どこから流れてきたんだ」
神棚は驚く。
しかし電気設備を回復させるためにそんなことに気にすることもなく、梯子を登っていった。
渓谷の上に着いた。
ここから南に下れば商業区や居住区がある村の中央に出る。
そして橋を渡って北西に進めば警鐘神社がある。
その入り口の近くに電気設備が存在する。
さっきの銃撃もあり、拳銃を構えながらゆっくりと橋を歩いていく。
橋の中程に差し掛かった時
何か歩いてくる。
いや歩いてはいない。
それは鉄塔の方へ消えていった。
「何だ。薄気味悪いな」
神棚は少し不安になる。
橋を渡りきり神社への入り口へ向かう坂道を下る。
その途中には渓流のゴミを処理する小さな施設や、岸の岩石を調べる調石所がある。
それらの施設を横目に見ながら、丘の道に着いた。
ここから鉄塔までは一本道だ。
小屋に着いた。
すぐ上には鉄塔があるがそんなに大きな物ではない。
「これをこうして、ここをこうしてやれば…、よし、できた」
神棚は電気設備を何とか回復させた。
「ふぅ、さて戻るとしようか」
と村の駐在所に戻ろうとするが
ふと疑問が浮かんだ。
あの水は何だろう。まさかあの伝説がな…。
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