11人が本棚に入れています
本棚に追加
少しロビーが明るくなった。
「電気が回復したようですね」
女将が言う。
ロビーに集まっていた人々はそれぞれの部屋に戻っていった。
「俺たちも戻るか」
灘と半田は部屋に戻ろうとした。
するとまた電気が落ちた。
「ぎゃあああ」
旅行客の一人の叫び声が聞こえた。
「うわああっ!」
二階からも聞こえた。
「何があったの」
半田が不安気に聞く。
「分からない。もしかしたら、さっきの板前に…」
灘は言う。
「嫌なこと言わないでよ」
泣きそうな声で半田が言う。
「雪乃、あそこのフロントの下に隠れてろ。俺、ちょっと様子を見てくる」
フロントを指差し言う。
「わかった。気をつけてね」
半田はフロントに隠れた。
「よし。まずはさっき声のした、あそこの部屋だな」
懐中電灯で一階廊下の一番奥を照らす。
そこには何もいないが、今にも何か出てきそうな雰囲気がする。
一歩一歩おそるおそる歩いていく。
部屋の前に着いた。
中からは物音もしない。
鍵があいていたので、ゆっくりと扉を開ける。
部屋に入ってすぐに 目に入ったのは大量の血だった。
「うわっ」
灘びっくりして部屋を出る。
すると中で倒れていたはずの旅行者の屍体が起きあがった。
灘はすぐそばにあったロッカーの影に隠れた。
旅行者は灘に気付くことなく、ロビーへ歩いていった。
どうやら半田には気付かなかったようだ。
「ふー。危なかったな」
灘は胸を撫で下ろした。
何か武器になるものは、とロッカーを開けると中には暖炉用の火掻き棒が入っていた。
灘は火掻き棒を取ると、もう一度ロビーへ行き、ロビーを通り抜け階段へ向かう。
階段を昇り、二階へ上がる。
すると灘の部屋の隣の部屋で物音がした。
「誰かいるのか」
灘はゆっくりと部屋に近寄り、扉を開けた。
しかし所々に血の染みがあるだけで部屋には誰もいない。
不審に思いながらも灘は部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!