惨劇

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少しロビーが明るくなった。 「電気が回復したようですね」 女将が言う。 ロビーに集まっていた人々はそれぞれの部屋に戻っていった。 「俺たちも戻るか」 灘と半田は部屋に戻ろうとした。 するとまた電気が落ちた。 「ぎゃあああ」 旅行客の一人の叫び声が聞こえた。 「うわああっ!」 二階からも聞こえた。 「何があったの」 半田が不安気に聞く。 「分からない。もしかしたら、さっきの板前に…」 灘は言う。 「嫌なこと言わないでよ」 泣きそうな声で半田が言う。 「雪乃、あそこのフロントの下に隠れてろ。俺、ちょっと様子を見てくる」 フロントを指差し言う。 「わかった。気をつけてね」 半田はフロントに隠れた。 「よし。まずはさっき声のした、あそこの部屋だな」 懐中電灯で一階廊下の一番奥を照らす。 そこには何もいないが、今にも何か出てきそうな雰囲気がする。 一歩一歩おそるおそる歩いていく。 部屋の前に着いた。 中からは物音もしない。 鍵があいていたので、ゆっくりと扉を開ける。 部屋に入ってすぐに 目に入ったのは大量の血だった。 「うわっ」 灘びっくりして部屋を出る。 すると中で倒れていたはずの旅行者の屍体が起きあがった。 灘はすぐそばにあったロッカーの影に隠れた。 旅行者は灘に気付くことなく、ロビーへ歩いていった。 どうやら半田には気付かなかったようだ。 「ふー。危なかったな」 灘は胸を撫で下ろした。 何か武器になるものは、とロッカーを開けると中には暖炉用の火掻き棒が入っていた。 灘は火掻き棒を取ると、もう一度ロビーへ行き、ロビーを通り抜け階段へ向かう。 階段を昇り、二階へ上がる。 すると灘の部屋の隣の部屋で物音がした。 「誰かいるのか」 灘はゆっくりと部屋に近寄り、扉を開けた。 しかし所々に血の染みがあるだけで部屋には誰もいない。 不審に思いながらも灘は部屋を出た。
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