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バチッ、とはじけるような音と共に目の前の父親が突然崩れ落ちた。
落雁のように崩れ倒れこんだ父の眉間の先には、たった今頼まれて何の気なしに手渡した電動髭剃りの先端がバチバチと音を立てて閃いている。
ああこれは髭剃りじゃない、よく見たらスタンガンだ。慌てて駆け寄ろうとした瞬間、手に込めていた力が緩み、ビニールテープで束ねていたスケッチブックが足下へと落ちた。
右足の小指から中指へ、やがて肉のついた親指へと素早くめり込んでいく。スケッチブックを止めているスパイラル状の針金の曲げられていない先端がくるぶしをわずかにえぐり、僕の口からうめき声がこぼれた。
痛みのあまり強く閉じた瞳をゆっくりと開けた。目の前に、うすい影が伸びている。
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