役立つ宇宙
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男は顎をしゃくって僕の背後を指差す。 「開けてよ」 木目の描かれた、何の変哲もない台所へのドア。 それくらい自分でやればいいのに。薄黒い靄が小さく頭を覆うった。男は構うことなく、さあやってくれたまえとでも言わんばかりの目のままに僕を見つめていた。 有無を言わせない瞳。無駄に長い睫毛の下の。 渋々取っ手を引く。扉が、レールの上をぎこちなく滑った。 煙草と吐しゃ物と、
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