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  そういえば、とってもくだらないことだったわ。 午前の授業で、具合が悪くて保健室に行っていたクラスメイトがいた。 女の子で、まだ名前を覚えてないけど、貴臣のことを結構気にしてる子だったと思う。 「六条くん、さっきの授業のノート見せてくれない?」 そんな風に頼まれたから、貴臣は当然快くノートを貸した。 貴臣はクラス委員だし優等生だから、ノートくらい誰からも頼まれるし、断ったこともない。 「あの…写す時間ないから、コピーしてもいいかな?」 「ああ、いいよ別に」 「それで、あの…職員室入りづらいから、生徒会室でコピーさせてもらってもいいかな…?」 そういう魂胆ね、とあたしは思った。 上手いこと口実を作って、貴臣と二人きりになろうとする女子はよくいる。 「はは、しょうがないな…先生に黙ってろよ?」 貴臣は女子の下心に気づいてるのかいないのか、こういうことも気前よく許すのだ。 だから誰にでも好かれるのだけど。 あたしは今さらそれを見ても特に何も思わなかったし、嫉妬も心配もなかった。 だけど、この言葉にはカチンときた。 「じゃあほたる、一緒に行こうぜ」 「は?」 貴臣は生徒会長だから、鍵を開けるために行く必要があるのは分かる。 その女の子もわざわざついて行く必要はないけど、貴臣一人にやらせるのは申し訳ないという建て前があるから行ってもいいでしょう。 でも なんであたし?  
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