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  成績優秀・容姿端麗・スポーツ万能…みたいに完璧な人間、誰だって身近にひとりくらいは思い当たると思う。 天は二物を与えずなんて言い出したのはどこのどいつか、気になるものだ。 所詮カミサマなんて不公平。 だけど、そんな一見完璧に見える人だって、欠点のひとつやふたつくらいあるでしょう。 実は性格が悪いとか、意外と要領が悪いとか、ナルシストとか根暗とかマザコンとか守銭奴とかなんでもいいけど、欠点の無い人なんていないよね。 完璧に完全無欠のスーパーマンなんて、この世に存在するはずはないと思うの。 あたしはひとり知ってる。 どこまでも完璧で誰からも憧れられる人間を。 そして、そんな彼の唯一の欠点を。 今、あたしの隣に座ってコーヒーを飲みながら読書に勤しんでるこの男がそれで。 昼下がりの穏やかな陽の光に包まれたカフェテリアで、その姿はさながら宮廷貴族のように華やかな気品に満ち溢れている。 作り物みたいに美しい横顔で、何気なくテーブルに肘をつく仕草さえ人の目を惹く。 ……はぁ。 あたしはその眩しい完璧ぶりを目にするたびに、しばしば頭痛に襲われたりするのだ。  
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