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  貴臣はそうやってあたしのことを守ってるつもりかもしれないが、残念だけど逆効果だ。 いい迷惑よ。 こんな普通女があんなスーパーマンみたいな完璧人間となんか一緒にいるもんじゃない。 「ねぇちょっと、あなた藤宮さんよね?」 ほーら、また来た。 「ちょっと話があるんだけど、一緒に来てもらえる?」 人通りのない廊下の真ん中に現れて、そう言ってあたしの行く手を阻んだのは女子5人。 いつも貴臣の周りでキャーキャー騒いでる自称ファンクラブの会員だ。 女の嫉妬というのは恐ろしいもので、彼女たちの崇拝する王子様が他の女と一緒にいようものなら、平生の彼女らならば考えもしないような残酷なこともやってのけるものだ。 ということを、あたしは15年ぽっちの人生で身をもって学んできた。 5人は、手近な教室に誰もいないことを確認すると、シカトして立ち去ろうとしていたあたしの腕をひっつかんで無理やりそこに連れ込んだ。 つかまれた腕を思い切り振り切ったら腕は解放されたけど、逃げられないように彼女たちが扉の前に立ちふさがる。 「何の用?」 分かっていながらも、あたしは顔をしかめて聞いた。 すると、5人は円になってあたしを取り囲み、じわじわと迫ってくる。  
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