6人が本棚に入れています
本棚に追加
友理の心は驚愕と疑問で満ちていた。
目の前でいきなり消えた「双頭の波紋」。人間が突然消滅するというこの事象に、ただ戸惑うだけであった。
それと同時に、焦りも感じていた。高松に逃げられたのかも、という悪い予感が頭の中を巡る。
もしその予感が当たっていたら、仇を討つ絶好の機会を逃したことになる。
友理は唇を噛み締めた。
「随分と、ご機嫌斜めのようだな」
友理はぎょっとした。
ふと景色が揺れたと思うと、その揺れの中に段々と人影が見えてくる。少しずつ、しかし確実に、その人影はよりはっきりとしたものとなってくる。
翔太であった。
その姿はいまだにぼやけているが、そう判断できるくらいは明確に見ることが出来る。
「坂口……!」
「地獄の底から舞い戻って来た、とでも言うべきかな?」
翔太はくっくっくと笑いを漏らした。揺れは無くなり、その姿は既に元のそれに戻っていた。
「高松さんを何処にやったの? 答えによっては、承知しないよ」
友理がドスのきいた声で聞く。
「殺した、跡形も無いほどバラバラにしてやったのさ」
友理の顔が蒼白になる。自分が討つべき仇を、獲物を、奪われた。全く無関係の人間に。
憤怒、焦燥、歓喜、憎悪、後悔。
様々な感情が友理の心を駆け巡る。だが、最も気になる事は、他にあった。
「坂口、一つ聞かせて」
「何だ」
友理は一度深呼吸をし、言い放った。
「なんで全裸なの?」
全裸の坂口は、教壇の上で高らかに笑った。
最終決着は近い……。
最初のコメントを投稿しよう!