坂口翔太

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 翔太はゆっくりと語り出した。友理の疑問を晴らす為である。 「俺は、生と死の狭間をさまよっていた。鹿庭にバラバラにされたときだ。そう、俺は確かに肉体を失った。だが、それでもなお、死にはしなかった」  友理はそれを眉をしかめて聞いている。 「何故かは分からない。精神だけが分離し、俺はいつの間にか何もない『無』の世界に迷いこんでいた。そこで永遠とも言える時を過ごしたんだ。そして変化は起こった、俺の前に、一人の死神が現れたのさ」 「死神?」  友理の表情が曇る。 「ああ、奴はそう言っていた。その死神は言ったんだ、生きたいか、力が欲しいか、と」  翔太は両腕を掲げ、天を仰いだ。 「もちろん言ったさ! 生きたいと! この世の全てを超越する絶対的な力が欲しいと!」  翔太はニヤッと笑った。 「そうしたらどうなったと思う? ホントにくれやがった! 決して尽きない命の炎と、神をも超える絶対的な力を!」  友理の表情がますます曇る。 「だが、死神は言った。過ぎたる力は、我が身を滅ぼす、と。その言葉だけを残して消え、俺はここに来た」  翔太は、胸に手を当て、目をつむった。 「こうして俺は全裸になった」 「なんで!?」  友理は思わず叫んでしまった。 「今の話の何処に全裸が出てきたの!? 全く出てきてないよね? 全裸の『ぜ』の字も出てきてないよね!? 絶対的の『ぜ』は出てきたけど!」  その言動に、全裸の翔太は激昂した。 「全裸のどこが悪いんだ!? 全裸ほど素晴らしい格好は、この世に存在しない!」  友理と翔太は、互いに向き合い睨みあった。  友理は傍らにあった剣を取り、翔太に向けた。  何故こんな所に剣があるのか、と言うことについては触れないで頂きたい。 「いいわ、決めましょう。あなたの言う通り全裸が正しいのか、そうでないか」 「いいだろう! 我が全裸の力、とくと見るがよい!」  翔太も剣を抜いた。  どこから抜いたかは聞かないで頂きたい。 「さあ、始めよう」 「ええ……!」  互いの剣と剣がぶつかり、咆吼する。  全裸の意味を確かめる闘いが、今始まった。
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