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「イツカハ、コノトキガクルトオモッテイマシタ」
教室を支配する静寂を破ったのは、ヨーロッパからの留学生。ジーコであった。
制服を紅く染めた翔太は声の発せられた場所、黒板の前に立つジーコを視界に捉えた。今だ胸から鮮血を噴出させる、重野を尻目に。
「メザメテシマッタアナタヲ、ホオッテオクコトハデキマセン」
ジーコはブレザーの内ポケットから、一丁の拳銃を取り出した。
「え? 本物!?」
友理は驚きと疑いの二つが混じったような表情である。
「コルトM1911A1か……。随分と古い物を持ち出してきたな、ジーコ」
翔太は、それが本物だと理解していた。しかし、そこに恐怖はわずかにも存在しない。
「シンデクダサイ、サカグチサン」
ジーコはゆっくりとした動作で銃口を翔太に向け、引き金に力を込めた。
静まりかえった教室に響く銃声。
ジーコによって放たれた鉛の弾丸は、翔太の額に穴を開けていた。
一瞬のけぞる翔太。しかし、確かにそこに立っていた。
「いてぇな、オイ」
頭蓋骨を割られ、脳の組織を弾丸で破壊されているにも関わらず、平然とジーコに文句をつける。
「ヤハリ、コンナモノデハ、アナタヲタオセルハズハナカッタ」
ジーコは、何を思ったか手の中の拳銃を投げ捨て、目を閉じた。
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