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生徒達が息を飲み、静まりかえった教室には、二つの影が飛び交っていた。一つは黒、一つは金。
それは、常人の肉眼では捉える事さえ困難なスピード。重なっては離れ、重なっては離れる。その繰り返しであった。
そして、重なる度に打ち鳴る高い金属音が、教室に響く。断続的に響くその音の原因は、争う二人の手に握られたものだった。
黒い影、翔太の手にはアクリル製の。金の影、ジーコの手にはアルミ製の。それぞれの定規があった。
本来なら直線を正確に書くための定規は、二人の超人によって凶悪な武器と化していた。
「貴様とは常日頃から殺り合いたいと思っていた。だが、一つ俯に落ちない事がある」
激突の最中、翔太が不意に口を開いた。
「ホウ、ナンデスカ?」
ジーコもそれに答える。
「何故、俺と戦おうと思った?」
「アナタヲ、キケンブンシトハンダンシタカラデス」
「何? なら以前はそうでなかったというのか?」
「イイカタヲカエマショウカ。アナタガ、カクセイシタカラデスヨ」
「覚醒だと?」
翔太は怪訝そうにジーコを見る。
もちろんその間も戦いは続いている。
「ワタシノシメイハ、ロックミノチツジョヲマモルコトデス。ソノタメニ、アナタハジャマナンデス」
それを聞いた翔太の怒りは、ついに頂点に達した。
「たった……、たったそれだけの為に!」
その瞬間、二つの影は重なった。
──決着である。
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