死闘

4/5
前へ
/22ページ
次へ
 生徒達が息を飲み、静まりかえった教室には、二つの影が飛び交っていた。一つは黒、一つは金。  それは、常人の肉眼では捉える事さえ困難なスピード。重なっては離れ、重なっては離れる。その繰り返しであった。  そして、重なる度に打ち鳴る高い金属音が、教室に響く。断続的に響くその音の原因は、争う二人の手に握られたものだった。  黒い影、翔太の手にはアクリル製の。金の影、ジーコの手にはアルミ製の。それぞれの定規があった。  本来なら直線を正確に書くための定規は、二人の超人によって凶悪な武器と化していた。 「貴様とは常日頃から殺り合いたいと思っていた。だが、一つ俯に落ちない事がある」  激突の最中、翔太が不意に口を開いた。 「ホウ、ナンデスカ?」  ジーコもそれに答える。 「何故、俺と戦おうと思った?」 「アナタヲ、キケンブンシトハンダンシタカラデス」 「何? なら以前はそうでなかったというのか?」 「イイカタヲカエマショウカ。アナタガ、カクセイシタカラデスヨ」 「覚醒だと?」  翔太は怪訝そうにジーコを見る。  もちろんその間も戦いは続いている。 「ワタシノシメイハ、ロックミノチツジョヲマモルコトデス。ソノタメニ、アナタハジャマナンデス」  それを聞いた翔太の怒りは、ついに頂点に達した。 「たった……、たったそれだけの為に!」  その瞬間、二つの影は重なった。  ──決着である。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加