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何時間寝ていたのだろう。目が覚めると、もう日が傾いていた。
(わぁ、結構寝ちゃってたんだ)
軽く伸びをして、あくびを一つ。またも毛がむずむずするから、簡単に毛繕いを済ませる。
それからご主人さまが帰ってくる時間まで、ソファの上でのんびりしておく。
そこで、もう一回欠伸をする。
(なぁんか……今日はすっごい眠たいなぁ。もうすぐ春だからかなぁ?)
そんないかにも的外れなことを考えながら、尻尾を揺らしてご主人さまを待つ。
ご主人さまを待つけれど、いつも夕日が沈む前には帰っていたのに、今日は外が真っ暗になっていた。
(ご主人様どうしたのかな?もう帰ってくる時間が過ぎちゃってるのに……)
だんだんじっとしてることができなくなって、そわそわしてしまう。
今までこんなことがなく、時間にはしっかりしていたのに。何かがあったんじゃないかと心配になってくる。
(大丈夫かな?)
とりあえず、ソファの上から下りて、外がよく見える窓に座る。
どんなに外を見ても一向にご主人さまの姿は見えない。
(迎えに行こうかな?)
外を見ながら、そんな考えが浮かんでくる。
でも、まだ外に出たことがない僕は、すごく迷った。
(行こう!)
決めるが早いか、僕はご主人さまがいつでも外に出られるようにと少しだけ開けてくれた窓に上った。
ご主人さまに拾われてから初めての外だ。
まだまだ外に出ることは怖い……。だけど、ご主人さまのためだと思えば、全然かまわなかった。
(遠くまで行かなくてもそこまでだったらご主人さまが来たら見えるよね)
僕は窓から飛び降りて、大きな道に出た。
数歩歩いたところで、ちらりと見たことのある姿があった。
(ご主人さま!)
僕は見えたご主人さまに駆け寄ろうと大きな道を横切った。
瞬間、僕のすごく近くで大きな音が響いた。
その音と同時に僕の体がふわっと宙に浮いた。
「にぃ……?」
僕は何が起こったのか、あんまりわからなかった。今わかるのは……体中が痛いことと、薄れゆく意識の中でご主人さまが僕のことを呼んだ声だけ……。
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