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"まるでアリスのお話のようね……"
ふと、そう思っていると、後ろから誰かに声をかけられた。
「さぁ、お掛けになってください。紅茶を飲みましょう?」
少し驚きつつ、振り返ってみると兎の少年が一人。
「あの?」
「これから、真夜中のお茶会の時間です。貴女はそのお客様ですよ。招待状をお持ちでしょう?」
手に持っているものに目を向ける。
黒い封筒に中には紅い文字の招待状。
「そういうことだったのね?」
聞くと兎の少年は頷く。
「そういうことなら、お紅茶頂くわ」
椅子に腰掛け、仮面の殿方に淹れてもらった紅茶を飲む。
すると、目の前の殿方が笑った気がした。
そして、口を開いた。その声は、地を這うように低く、心地の良い高さの声だった。
「さぁ、お茶会の始まりだ。終わらないパーティーの……」
誰かが歌う讃美歌。遠くから聞こえてくる鐘の音色。
紅茶の香りと甘く香ばしい菓子の香り。
そして、蝋燭の炎があれば舞台は完成。
後は、招待状を持って歌に誘われた選ばれし者が来れば始まる。
「クククッ……さぁ、楽しいショーの始まりだ」
「でも、その前に紅茶を飲みましょう?」
次は、貴女のところへ黒い招待状が届くかも、知れない……。
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