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片想いでも、叶わないと知っていても僕は貴方が好きです。
初めて会って、それでも僕を受け入れてくれた貴方が大好きです。
僕の名前は「サーシャ」
とても立派な名前だと思う。僕はこの名前が大好きで、すごく気に入っている。
だって僕の大好きなご主人さまに付けてもらったから。
僕はもともと捨て猫だった。……違う。本当はちゃんと飼い猫だったお母さんから生まれた。僕には兄弟もいた。
でも、僕だけが家族から引き離された。
……それは僕が他の兄弟とは違っていたから……。
ほかのみんなは普通の茶虎や白やぶちの模様だった。だけど僕の場合は全身が真っ黒で、目の色が左右違っていた。
左が青みがかった紫、右が血のような真っ赤な色。
それを気味悪がった最初の主人が僕だけをあの小道に置いて行ったんだ。
暗くて誰もいなくて、怖くて寂しくて、雨が僕の体をたたきつけて、寒くて……。
僕は生まれてすぐに死んじゃうんだって思った。
でも、本能は助けを求めていた。
(誰でもいい。お願いだから僕を助けて!)
そんな想いを込めて必死で鳴いていた。そしたら今のご主人さまに会えた。
「捨てられちゃったんだね」
「みぃ……」
声を掛けられて、僕は震えながら小さく鳴いた。
「こんなに濡れちゃって、寒いでしょ?僕んち来るかい?」
なんで?僕のこと気味悪くないの?僕はこの姿で捨てられたのに、なんで?
「おいで……」
「にゃあ……」
僕のこと、受け入れてくれるの?助けてくれるの?
彼の腕に抱かれ僕は彼の家まで来た。
彼は、濡れた僕をお風呂に入れてくれて、温かいミルクをくれた。
すぐに捨てられた僕には、すごく暖かくて安心が出来た。
家族ってこんなものなのかな?僕の兄弟もこんな感じで暮らしているのかな……。
そう考えると、だんだん悲しくなってくる。
僕も一緒のご主人さまと暮らしたかったって思ってしまう。
「おまえ……行くとこがなかったら僕と一緒に暮らす?」
「にぃー……」
一緒?家族になれるの?こんな僕が家族になれるの?
「……嫌かな?」
少しだけ悲しそうな目でのぞき込んでくる。
家族になれるのに僕が嫌なはずがない。僕はそんな彼の鼻の頭を一舐めして、鳴いた。
これからよろしく、ご主人さま。そんな意味を込めて。
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