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「良かった。じゃあ、名前が必要だね。何がいいかな」
そう言って何やらぶつぶつとつぶやきだした。
僕はそれを不思議に見ていた。
「決めた!!おまえの名前は『サーシャ』。うん。これにしよう」
……サーシャ……僕の名……?
「にゃ~」
「ふふっ気に入った?僕はね、華月って言うんだ」
華月。ご主人様の名前?華月!華月!!嬉しい。僕の新しい家族。
この時、僕の心に特別な感情が出てきたことにまだ気づかなかった。
「サーシャって綺麗な眼の色してるよね。赤と紫、僕の好きな色だよ」
「にゃ……」
僕の眼の色が綺麗?でも、僕はこの目で一人にされたんだよ?
「ビー玉はめ込んだみたい。珍しいよね。あんまいないんじゃないかな、おまえみたいな猫。僕って得したかな」
笑顔で僕の目をまじまじ見てくる。
「あっ!光の加減で微妙に色が変わるんだね。すごく綺麗」
ご主人さまが僕の目をこんなに誉めてくれるんだったら、少しはこの目が好きになれる気がした。
「ん~あっもうこんな時間だ。学校に行かなくちゃ。じゃあ、サーシャいい子にしてるんだよ?」
「にゃ」
「ん。いい子。じゃいってきまーす」
ご主人さまは大学って学校に行っているらしくて、夕方まで帰ってこない。僕はその間はずっと部屋の中にいるんだけど、ご主人さまの部屋は意外と広かった。
ご主人さまは一人暮らしみたいで、僕とご主人さまの他には誰もいなかった。
(ご主人さまは今までずっとこの広いとこに一人だったのかな……寂しかっただろうなぁ……)
華月は片親で育てられてきた。高校になってから、これ以上母に迷惑をかけられないと家を出て、バイトをしながらお世辞にも綺麗とは言い難い小さなアパートで暮らしてた。華月は一見しっかりしているようで、実は寂しがり屋なのだ。
だからサーシャを引き取ったのかもしれない。
僕がいるからもう寂しくなんてないよね?ご主人さまが僕を助けてくれたように、きっといつか僕がご主人さまを助けてみせる。
大好きな大好きなご主人さまだもの。いつかきっと役に立って見せるもの。
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