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……そう……大切で、大好きで、僕のたった一人の家族だもの……。
「大好きだよ。ご主人様」
家族愛とか信頼とか感謝とか親愛とか主従とか、そんなんじゃなくて、一人の恋愛対象としてサーシャは華月が好きなのだ。
華月はわからなくていい。だって、僕は猫でご主人さまは人間さまだもの。僕なんか、ただのペットにしかすぎない。絶対に気持ちがつながるわけない。そういう環境に僕たちは生きているんだもの。それは、絶対に変えようのない真実。
(でも、片想いのままなら許されるよね)
華月は今、すごく悩んでいた。
「サーシャはもう家族なんだよね?だったら首輪……とか付けてたほうがいいのかな……でもでも、サーシャはもとはノラだったから、出て行ったりとかしないかな?」
う~ん、う~んとペットショップの首輪を売っているところで真剣に迷っていた。
ほかの人から見てみればかなり怪しいことこの上ないものである。
「うん!決めた!この首輪にしよう!」
考えがまとまったのか、ようやくその場から離れて行った。手には、紅い色のした首輪を持って。
(サーシャ、喜んでくれるかな?もし嫌がったらどうしよう……でも、その時はその時だよね)
「きっと似合うだろうなぁ。サーシャって毛艶がいいし。結構かっこいいしね」
ふふっ楽しみだな。
サーシャはその頃、日当たりのいいところで日向ぼっこをしながら、ぐっすりお休み中。
夢の中はもちろん大好きな華月のこと。
二人でのんびり公園の並木道を散歩する。
ささやかな夢であっても、サーシャにとってはすごく幸せなことだろう。
日も少し傾き始めたころ、空は夕日で真っ赤に染まっていた。
「……なんだかサーシャの目の色みたい。綺麗だな。そだ!写メしちゃおう!」
道の真ん中。ケータイを片手に持って空をジィっと見つめる。
「明日は晴れかな」
ぽつりと満足げに呟き、帰路についた。
「サーシャ、ただいま~」
「みゃあ」
(ご主人さまが帰ってきた)
僕は玄関へ走って迎えに行く。
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