500人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
「宮内…宮内!!」
「ん…」
大きく肩を揺すられ、目を開く。
するとそこには切羽詰った表情をした新井が映っていた。そんな新井をみつめながら、俺はポツリと…
「お…そ…いよ」
今にも泣きそうなか細い声で、唇をぎゅっと噛む。
「わりぃ。今さっき学校について、携帯はサイレントモードにしてて気付かなかった」
「ありえ…ない…こんな時こそマナーモードだろ…」
「悪かった。でもな…お前も悪い。どこの女子トイレかわからなくて探しまくったぞ」
「あ…ご…ごめん」
「まぁ無事みつけたからいいけど」
「……」
寒い…服が湿って肌にはりつく。
気持ち悪い…
「しかしびしょ濡れだな。今は何月だ?」
「11月…」
「水遊びにしちゃ、季節違うぜ」
「……」
本気で言っているのだろうか?いや違う。わざとちゃかして場を少しでも明るくさせようとしているんだ。でも今の俺にとってそれは苛立ちに触れるだけだった。
「水遊びなんて自分からするわけないだろ!?」
「っ…」
「……」
あぁ…ヒステリックな声を上げてしまった。
でも俺は悪くない。こんな状況でからかう言い方をする新井が悪いんだ。
「…悪い。気、悪くしたなら謝る。ただ俺は元気ないお前を少しでも笑ってほし…いや、悪かった…」
「…ううん、俺…“私”も怒鳴って悪かった…よ」
「?私」
「な…なんだ……なに、よ」
女が私って言って悪いのか?俺…いや私は新井を睨む。
「どうしたんだ急に。気持ち悪い」
「な!?」
気持ち悪い!?今、気持ち悪いっていったかこいつ。
「宮内らしくない。どうしたんだ急に。あと無理に私なんていうな」
「……だろ」
「?」
「俺女って痛いだろ!だから私っていったのに、なんだよ気持ち悪いって!ならなんていえばいいんだよ!!」
「お、落ち着けよ。俺は別に痛いっておもってな…」
「嘘だ!本当はこいつ、痛い奴だって思ってるんだろ。俺だって…俺っていいたい…でも!」
“俺女とかマジ痛いんだけど”
女子達の言葉が胸に刺さる。
そうだよ。男なら女らしい女の方が好きだ。男らしい女なんて…まして俺なんて…
「…宮内」
「……」
「俺はお前がどんなのだって受け入れてるつもりだ。宮内は宮内らしくしてる方が俺は好きだよ」
新井の手が、濡れた俺の肩を軽く掴む。
最初のコメントを投稿しよう!