五条セツナの【感情】

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 年季の入った診察台に腰掛ける男。全身黒のコートで覆い隠した彼は、もう夏なのに汗一つ掻かず平然としている。 「にしても暑いね。日本の夏は暑いねカヲラ君」  言葉に説得力という存在が見当たらないぞ。  この変人の名は鈴鹿、潰れた病院に住む魔性の変態だ。 「暑いわねカヲラ君。アイスが食べたいの、買ってきてくれないかしら……言葉を間違えたみたい、買ってきなさい」  何故命令形になった。二階級特進でもこうはならんだろ。  隣で軽く、しかし重い毒を吐く彼女の名は五条セツナ。何も言わなければ、モデル顔負けの美少女なのだが。 「良いねアイス! カヲラ君、僕が抹茶派だってのは知ってるよね? パシリ……じゃなくてお使い宜しく!」  パシリって言ったろ今。俺がいつなんどきパシリになるなんて言ったよ。 「なんだい? カヲラ君はパシリなのかい?」  否定してんだよ!! 「私はバニラよ。私ぐらいのグルメにでもなれば、サーティーワンのバニラを食べただけでそれがどこのアイス屋で売られているか分かるものよ」 「……それ全部サーティーワンじゃん」 「生意気よカヲラ君」 「逆ギレ!?」 「で、つまりだ。イレイサーから奪われたお嬢ちゃんの【概念】を取り戻したい。そゆことかな?」  今の会話でその答えには行き着かないし纏まらない。あと、話の戻し方に無理矢理な感じが否めない。 「できますか?」 「できるよ。不可能か可能か、決めるのは誰でもない……君自身だからね」
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