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俺の家は可も無く不可も無い一軒家。玄関前で俺は、五条に再度注意した。
「家の中では暴言吐くなよ」
「暴言だなんて失礼ね。私のは無害よ」
呼吸するみたいに嘘をつくなコイツ。お前の毒舌は蠍やコブラより殺傷力のある猛毒だろ? 無害どころか公害クラスの有害に認定してんだよ。俺が。
「何かややこしくなるから極力喋るな」
「それは不可能ね」
どうしてよ?
「感情が無い分、会話で埋め合わせしなくては相手に気持ちが伝わらないもの」
「…………」
軽はずみに俺はなんてこと言ったんだ。喋るな? 五条は自分の気持ちを伝えようと頑張っているのに……馬鹿か俺はッ!
「……ごめん。俺、なんて言うか……ごめん」
「気にしなくていいわ。全部嘘だから」
「俺の謝罪の気持ちを今すぐ返せ!!」
☆ ☆ ☆
音が極力出ないように玄関を開ける。出来れば気付かれないように自室に行きたいからだ。
「不法侵入している空巣みたいねカヲラ君。威風堂々としたら?」
馬鹿野郎、声のボリュームを下げい!
「静かにしろよ。気付かれんだろ?」
「何か問題でもあるの? 別に疚しいことをしてるわけじゃないんだから毅然とした態度でいればいいじゃない」
後ろめたいことが無くは無いだろ?
「度胸と肝が小さい童貞野郎ね。だから息子も矮小なのよ」
「お前に俺の何が分かる!! 根も葉もない言い掛かりわぁ……」
全身の血の気が引くのを感じる。
「お兄ちゃん……? 帰ってきたの……?」
玄関に近付く足音、愛しのゴブレットに見つかった瞬間だった。
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