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「そういえば、なんで二人がいるの?」
「あぁ、そうでした。たった今、黒羽から情報が入ってきました」
「ふーん…、それでどんな情報?」
「明日の明朝、伊達軍が武田軍と戦するらしい。武田が負けるとは限らないが、一応報告はしておく」
ピタッと幸森は団子を食べる手を止めた。
自分の家族や親しい仲間がいる甲斐武田が戦をする、家族が命を落とし合うという意味になるからである。
「また…数多くの命が散るんだね」
「若…」
「分かってるよ…それから、他に何か?」
話の流れを変えようと、視線を黒羽に返す。
黒羽は真剣な顔をしている。
「…この背後を取ろうと、豊臣が行動を起こしているらしい。移動速度は伊達軍の騎馬隊より速い。明日の明朝には、必ず到着するだろう」
「…ごちそうさま」
幸森が団子の皿を置いて、立ち上がった。
そして、自分の隣に置いてあった刀を腰に差した。
「いかがなさいますか、若」
「…この事は、幸達は知ってるの?」
幸森が黒羽に問いかける。
『幸(ユキ)』とは、真田幸村の事を指している。兄である幸村を愛称で呼ぶ時の名である。
「おそらくは知ってるだろう。多分、佐助が気付いているはずだが…」
「だろうね。ということは…」
「伊達…ですか」
真剣な雰囲気が漂っている。
周りから見たら、入ってはいけない空気があるはずだ。
「知ってるか知らないか分からないが、一応行って見るか」
「そうしましょう」
「それに…」
「若?」
白狼が幸森の顔を見る。もちろん今は真剣な状況だ。だが幸森の表情は…、
「伊達政宗…幸の宿敵…どんなヤツか、見てみたいよ」
何かを楽しみにしてる表情だった。
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