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「まぁ…ちょっと忠告しに来たんだ」
「忠告ぅ?まさか『兄は強いからやめておけ』なんて言うんじゃねぇだろうな?」
少し馬鹿げたように言う政宗。
言うまでもないが、冗談である。
それを幸森は…、
「それはあり得ないよ。似たようなものだけど」
と軽く返した。
「(あり得ないっつったなコイツ…!)んじゃ忠告ってなんだ?」
「奥州まで情報が流れてるか分からないけど…明朝の戦に背後を取ろうと豊臣が動いている。今回の戦は手を引いてくれないか?」
また周りがザワザワと騒ぎだした。
政宗も少し驚いている。
豊臣が動いている事を知らなかったのだ。
「おいガキ。それは嘘じゃねぇだろうな?」
小十郎が幸森を睨む。
初対面の者が急に、自分達が知らない情報を持っている…かつ忠告してくる。
これに不審を持たない者は、まずいないだろう。
「本当だ。…多分」
ゴッッッッ!!
「いっ…いてぇ…」
「!?」
一瞬の出来事だった。
周りが静まりかえっている。
幸森の言葉「多分」の「た」の字の時点で、幸森は頭を抱えてしゃがみこんでいた。
その隣には、額に怒りマークにあり、おそらく幸森を殴ったであろう右の拳が湯気だっている人物がいた。
その人物は、さっきまで木の影に隠れていた黒羽であった。
「幸森…テメェ俺が嘘を言ってると思ってたのか…!?」
「い…いや、そう言うわけじゃなくて…」
「俺が嘘っぱち流すとでも思ったか?俺は生まれてこの方お前に嘘をついちゃいねぇんだぜ?それともアレか?俺が言ったことに確信出来なかったか?だから団子ばっか食ってるから感覚が鈍くなるんだ!!」
「いや、だから…って話聞いてないよ…」
「誰だテメェ…?」
「あ…」
幸森がハッとなり、瞬時に顔を青ざめる。
一瞬のうちに木の影から軍の中心に飛んできたのだ。
いくら忍び混じりとは言うものの、これを知らない政宗達には『何処から飛んだんだ!?』などの疑問が頭に浮かんでくるだろう。
それよりも幸森は、黒羽と政宗とのにらみ合いで青ざめたのだ。
二人の目線の間には、火花がほどばしる。
「(何この二人!相性悪かったの…!?)」
密かに、そう思う幸森だった。
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