短編たちⅢ

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[※ヒバツナ・悲恋] (記憶喪失君喪失) 何を驚いているの? なんで泣いているの? 目を見開き肩を震わせ、彼は泣いている。 「…どうしたの?」 「…」 彼は何も言わない。 ただ、あまりに顔を歪ませて悲しそうに泣くもんだから、こっちまでもらい泣きしそうだ。 「…なんで、泣いてるの?」 「…れ、るから…あなたが俺を忘れるから…っ!」 …何を…言っているんだろうか…彼は。 「…初めてじゃないか。君と会うの。」 彼の顔が、一気に歪んだ。 その時、ズキッと頭に痛みが走った。 「初めて…なんかじゃありません!俺とあなたは…、なんでもありません…。さようなら!!」 そう言うと彼は走ってどこかに行ってしまった。 頭の痛みは、最高潮。 痛い痛い痛い痛い。 ただ1つ。痛みと共に脳裏に浮かぶは彼の涙。 …あぁそうか。 (涙を流させることしか) (僕はしなかった気がする。) (たぶん、だけど。) .
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