風の便り

3/9
前へ
/99ページ
次へ
  「お嬢様は、笑顔が素敵です。キクにもっと笑った顔を見せて下さいませ」     そんな事を言いながら、頭をさするキクに、私は何度も笑顔を作った。     ―キク、私実は渚に裏切られたのよ…お父様やお母様にも。     そんな事を言えたら、どんなに楽か…。   言いたくても言えない状況を作っているのは、自分を責めてしまうであろうキクの事が心配だからだけじゃない。     ―ガチャ     「お嬢様、お夕食の準備が出来上がりました」     渚が何も変わらないから。 私に悪びれる事もなく、まるで何もなかったように…。    
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

674人が本棚に入れています
本棚に追加