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渚の話はどれも新鮮そのものだった。
袋を持った少年とぶつかり、その袋の中から出てきた物は野菜だったとか、知らない人でも挨拶を交わしているとか───私には珍しい事ばかり。
「わたくしも行ってみたいわ」
無駄な事だと分かっていても、心の声をつい口に出してしまう。
「お嬢様……それは……」
キクが慌てて私の顔色を伺う。────分かっていても、無駄だと思い知らされるこの瞬間は辛い。
だけどその気持ちを抑える事が出来るのは、やはり渚のおかげだ。
「お嬢様まで外の街へ足を運んでしまったら、わたくしのお話は意味のないものになってしまいますよ」
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