薔薇の似合う女

26/37
前へ
/99ページ
次へ
  「草野はどこへ?」   「草野様は、先程お帰りになられました。」     この部屋へ来たのは、やはり渚が何か思い詰めているからだ。   暗すぎて、渚の顔が見えない。 優しく、か細い手が、渚の存在を知らせてくれるだけ…。     「渚、電気を付けてあなたの顔を見たいわ。」     先程から震えた渚の声は、どんどん勢いを増し、渚の手までも震え上がらせている。   その振動が、私の手にまで伝わり、早く渚を包んであげたい―そう心を焦らせた。     「電気はそのままでお聞き下さい…。」   「分かったわ、そのかわりあなたを抱き締めさせて…あなたの恐怖や迷いを、私が鎮めてあげたいわ」    
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

674人が本棚に入れています
本棚に追加