薔薇の似合う女

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    涙が溢れ、ふと目隠しの隙間から、光りが漏れているのが分かった。   ―電気が…付いてる…?     「な…ぎさ?」     そんな言葉を私が出すと、カチッという音とともに、手を動かせなくなった。   これは、まさかお父様がメイドに使っていた…手錠?     「渚!目隠しを取って!」     私の言葉は無視…。 振動は加速度を増し、私の胸を手の平が覆う。   渚の手ではない… 私の知っている、優しいか細い手ではない…。     「やめなさい!誰なの?!」     目隠しが外され、私の目の前に飛び込んできた顔は、渚でなく、草野だった。     「いやー!!どいて!お願い、やめて!」    
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