風の便り

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  「神様…私は幸せにはなれないのでしょうか…」     空を見上げ、流れる汗と涙を手で拭う。   池を覗き込むと、映し出された空の丸い月が、波打っていた。   歪んだ丸い月は、私を吸い込むように、瞳から離れてくれない。     「キク…ごめんね」     歪んだ丸い月へと近づくように、私は池へと身を投げた。   辛い思いをしたくない…。 もう希望の持てない人生は、嫌。     普通の女の子になりたかった。 お嬢様なんて呼ばれたくない。   さようなら…。  
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