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「……き……春輝」
一階から聞こえる母の声に、ふと目が覚める。
高校生にもなって、未だに母に起こされなければ起きられずにいるオレの名前は春輝。青春真っ盛りの高校一年生だ。
「……う、ん……あと5分――」
そう呟いて再び布団の中へと潜るオレは、やはり朝に弱かった。気が付けば、毎日毎日、飽きもせず、起こされてはこの言葉を漏らしていた。
今日でさえこの時点で、もう3回目にもなる。
「春輝ー」
当たり前だが、二階にある自室のベッドに潜るオレの呟き声が一階の母にまで届くわけもなく、まだ寝ているものだと思っている母は、ただただオレの名前を呼ぶだけで、決して2階までは上がってこない。
うっさいなぁ……眠れねぇだろうが!!
ゆっくりと寝返りを打つ。
「春輝ー。遅刻するわよー」
母のふとした一言にピクッと体が反応する。
つか、今何時だよ。目覚ましは……っと。
顔を伏せたまま、やみくもに目覚ましを探していると、右手に固く冷たい感触が、
「……えっと、7時10分」
何だ。まだ寝れるじゃんか。
そう確認して目覚ましを元の位置に置いた時に、不意にそれは目についた。
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