第1部  春風

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……やっと、着いたぁ。 自転車置き場に自転車を置くと、ポケットに手を突っ込み携帯を取り出して時刻を確認。 ――8時40分。 8時20分に家出たから、20分程度でで到着したことになる。 New record!! つまりは、新記録。とうとう理論値とまで言われた25分の突破に成功だ。 そんなどうでもいい記録を誇らしげに教室に向かうと、閉めきった教室から僅かに声が漏れていた。 「近藤」 「はい」 「斉藤」 「はぁい」 察するに、どうやら出席を取っているようだ。さっき名前を呼ばれたのが“斉藤”――と言うことは。 「桜野……ん? 桜野はどうした。また遅刻か?」 ガラガラガラ――。 「はい」 オレは何事も無かったかの様に教室に入った。勿論、HRの最中に入って来たのだからクラス全員の視線が、一瞬オレに集中する。しかし、それはもう慣れた出来事。いつもの事だ。 クラスの皆も、朝のオレの乱入はもう見慣れたのか、反応が以前に比べると大分薄くなっていた。
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