第1部  春風

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「お前なぁ。来るならもっと早くこんか!! 俺が面倒くさいだろうが!!」 「すいません……」 朝っぱらから説教は、何故か堪える。 正直もう止めてくれ、と言いたいところだが、遅れてきた自分が悪いのだから、それは仕方がない。イヤホンを外し忘れていたおかげで、声があまりよく聞こえないだけでも良しとするか。 「10回目の遅刻したら、個人面談だからな。覚えとけよ」 「――はい」 だるそうに言葉を返して席に着く。 出席確認が終わった後も担任の先生の話は続いたが、特に気に止める必要がありそうな話はなさそうだったので、机に顔を伏せて、僅かばかりの睡眠を確保していた。 そして、HRが終わる……。 突然だが、高校生には3つのタイプがいると、オレは思う。 「今日もまた遅刻記録更新だな」 HRが終わるなり、話かけて来たこの男の名前は“佑介”。佑介は、これから3つに大別するタイプのうち最も得をする“万能型”。 顔もいいし、性格もいい。頭も良くて、運動神経抜群の幼なじみだ。 そして、万能型の人間は例外なく人気がある。簡単に言うとモテるのだ。無論、佑介もそうである。 「今日はギリギリセーフだろ」 「でもホント、ギリギリやったな」  
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