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桜公園での出来事から、1週間が経っていた。
サンタと私は、今日も一緒に大学へ向かう。自転車を置き、綾川駅まで手を繋いで歩いた。なんだかくすぐったくて、まだまだ照れくさい。
「かおりさん、今度の金曜日の夜あいてない?」
「佑人君、呼び捨てでいいってばぁ。」
「そうなんだけど…、慣れるまで待って!」
目が合った。照れて、自然と笑い合った。
サンタの手は大きい。この手で、いつもバスケをしていたのだ。想像するだけで、ますます格好良い。
駐輪場から綾川駅までは歩いて3分ほどだ。しかし、私たちはいつも7分くらいかけてゆっくり歩いている。
5月の爽やかな風が、私の髪を揺らした。その風のために、私の口の中に髪が数本入った。
「佑人君、ちょっとごめんね。」
左手には荷物を持っていたので、私はサンタと繋いでいる右手を一瞬離そうと、手を動かした。
だが、サンタは離してくれない。
「ちょっと、一瞬手離させて。」
「やだ。」
「ちょっと~!」
サンタがケラケラ笑った。
私はサンタを睨みつつも、幸せを感じていた。が、口に入った髪の毛が気持ち悪くて、無理やり手を引き離そうと激しく動かした。
しかし、サンタの握る力がますます強くなるだけであったので、とうとう諦めた。
「も~。金曜日予定いれちゃうから。」
「分かった、分かった。」
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