中学時代【修学旅行】

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これは、まだサンタに出会うずうっと前の話。 私が中学2、3年生の頃の話。 中2の6月、ある雨の日曜日。私はソフトクリームをなめながら、小さな女の子を抱き上げている尾形俊樹を見て、一人でドキドキしていた。 その日から、私は尾形俊樹を意識するようになった。 尾形俊樹は美形だった。その当時人気のあった、ある男性歌手に似ていると女の子たちに噂されていた。本人は気づいていなかっただろう。 その当時の男子は、ほとんどがその歌手の髪型を真似ていた。もちろん、尾形俊樹も。 私は小学生のときも、中学に入学してからも、一度もカッコいい人の隣の席になったことがなかった。 いつも、冴えない男子の隣になることが多かった。 特に中学の3年間は、くじ引きをすると、山村和男(やまむらかずお)という、小柄な男子の隣になる率が高かった。 山村は、つぶらな瞳と軟らかいしゃべり方が特徴的だった。そして優しかった。だから私は彼が嫌いではなかった。中2の1学期も、山村と隣同士で、生活班も一緒だった。 山村と隣同士で、良いことが一つだけあった。 それは、尾形俊樹がなぜか山村と仲が良かったということだ。 よく、尾形俊樹が私の席に座って、山村和男とおしゃべりしていることがあった。 ある日の昼休みの終わりごろ、私が自分の席へ行くと、私の席に座っていた尾形俊樹が慌てて立ち上がった。 「あ、ごめん。」 尾形俊樹は、山村和男と挨拶を交わし、自分の席へ戻った。 私は、自分の席に座ると、尾形俊樹が自分の席に座ったということに対する、恥ずかしさと嬉しさで少しにやけてしまった。 学校の行き帰りは幼馴染の大山みち(おおやまみち)と毎日一緒だった。 みちは、発想と行動の天才だった。
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