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さて、いきなりだが問題。『夜のいいところ』ってなーんだ。
静かなところ?
三角一点だ、丸じゃない。
人がいないところ?
それも違う。
答えは、『太陽が出ていない』ところでした。
大体太陽って、何であんなに要らないものばかり放出するんだ? 紫外線とか紫外線とか紫外線とか、あと紫外線とか。黙って適度な明るさと温度だけ供給していればいいものを。
お天道サマは平等だ、なんて妄言だね。あの紫外線のせいで平等は成り立たない。本当に平等なら、僕にだけにでも紫外線をカットしてから看板を掲げていただきたい。
何を隠そう、僕こと榊原涼夜はアルビノである。アルビノというのは簡潔に述べると『皮膚に色素……メラニンがないので、紫外線などに対する抵抗がない』というもので、太陽は正に天敵そのもの。程度にもよるが、僕の場合は吸血鬼並みに太陽に嫌われている。
そんな僕の日課が夜の散歩。
天敵はいないし、人もいないし、空気は昼間よりマシ、不夜街でもないから物凄く静か。素晴らしい、町中貸切の散歩、とても素晴らしい。
………………人も、喧騒もない。
うん?
じゃあ、あの必死に逃げている少女は、僕の素晴らしい日常の……何だ?
序章、と言っておこう。
そう、序章だ。
僕を暗い日常を照らした、天敵みたいな少女との物語の、その序章。
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