†Lost memory†

日常

『明日の準備は終わらせてあるし、あとは何をしようかな』

床いっぱいに敷かれた青い絨毯やたくさんの本が目立つ部屋で、僕――アルスは壁に向けて置かれた机に向かっている

ふと、扉がノックされる小気味いい音が聞こえてきた

『どうぞ』

『アルス！』

僕の名前を呼びながら、１つ年下の女の子が部屋にやって来た

彼女の名前はリサ。僕と同じ家に住む、活発な女の子だ

『どうしたの、リサ』

『今日魔法教えてほしいの。ほらアルス、明日他の街に行っちゃうから..』

そう、明日の準備とは、「明日から始まる別の街での生活」の準備の事なんだ

リサももちろん知っている

『そうだね、わかった。今日はどんな魔法がいいの？』

尋ねると、ハッとしたように僕に笑顔を向けてくれる

僕と同じ黒髪が揺れ、大きな目は喜びを表したかの如く輝いている

『ありがと！えっとね―――』