第零章

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双つの月が昇る、真夜中。 少女が目を覚ましたのは、瓦礫の中だった。 冷たく砂っぽい風が頭上を抜け、朦朧とした意識に荒く揺さぶりをかける。 「んっ……?」 ぼうっと脳裏に靄がかかる中、少女は透き通りそうなほど白い瞼を上げた。 ぱちぱちとまばたきをする眼は、海よりも深く、宝石のように輝く澄み切った蒼色。 「何ここ……? 何してるの私……?」 緩慢に頭を起こすと、きりきりと頭が締め付けられるような頭痛が襲った。 その頭の中に記憶の欠片でも残っていないかと小さな両手で押さえて振り絞るが、出て来るのはごちゃごちゃとした知識しか無い。 「ん~……何だろ……ぼうっとする……私の名前、はぁ……」 (セドリア・キャリー・セナレアーク) 「!!?」 突然脳裏に響いた「自分自身の声」に、少女はその場で飛び上がった。 「声」は氷のごとき冷たさと仁王のごとき迫力を併せ持ち、無意識のうちに相手を怯ませる力がある。 「だ、だ、誰……?」 (分からないの? よし、成功したか……) 「声」は体を抱いて脅える少女とは対照的に、冷え切った鋼のような喜びを含んだ声で呟く。
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