Ｉ

道

僕は理解し小さく溜息をついた。

長い間恋愛などしていなかったからだ。

上司はそんな僕に気付くことなく話を続けた。

「俺の時代なんてエッチしてしもたら絶対結婚っていう時代やったからな。

それに比べて今は何処でも誰とでもパンパンしよる。

そんな幸せ羨ましいわホンマ。」

上司の言葉に僕は何も言い返さなかった。

ただタクシー運転手はハンドルを握り仕事をまっとうしていた。

車窓から見える景色は相変わらず多くの雑居ビル。

僕はそんな何でもない景色を眺めながら一人考えていた。

幸せ？

何が幸せなのだろうか。