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「多喜と哲夫は?」
そう言えば二人の兄弟の声を聞いていない。
「学校よ。もうすぐ帰って来るはずやけど」
「そうか……」
そういえば学校があった。学校も今となっては懐かしい。
「ところで、いま訓練の方はどう? ちゃんとやってる?」
母さんが心配そうに少し首を傾げる。
「もうすぐ終わり。まあ、電信員やからそんなに難しくないんやけど」
「でも、覚える事多いんちゃうの?」
「覚えてしまえばそれでいいから。操縦員なんか覚えるだけじゃあかんしね」
母が「ふーん」と茶を啜る。
「和雄はできんの?」
「ちょっとはできるけど、着艦とか高度な操縦は無理」
「あらそうなん。てっきり全部できんとあかんのかと思っとったわ。それで、訓練終わったらどうなるん?」
自然な会話とは言え、痛いところを突いてくる。
「ん、まあ。一応出撃する予定がはいってる」
少し声が震えた。
「ほんまぁ。お祝いしないとあかんね」
「いや、そんなんせんでいいよ」
「遠慮せんでもいいのよ。それより、くれぐれも気をつけるんよ」「外出日を一日だけ増やしてもらって。明日帰るから
母は手ぬぐいで手を拭きながら小走りで駆け寄ってきた。
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