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「ええ、まあなんとかね。夜になるとここら一帯は真っ暗になるし、山を越えてはこんね」
「でも僕ら警報が鳴るたびに逃げらされるねん。最近は毎日」
「そうそう。鳴った途端先生が、各自逃げるように、解散。って言って一人でどっかいっちゃうねん」
ちびっ子二人も口々にそう言った。
「無責任な先生や」
「うん、仕方ないから近くの林の中に逃げるけど。多いときなんか一日二、三回はあるねん」
それは中々いい考えだ。自分が皆を連れて逃げているという哲夫の頭を撫でてやる。
「でもな、もうじき兄ちゃんがみんなやっつけてくれるんやろ?」
二人がキラキラした目を私に向ける。母さんもその傍らで嬉しそうにクスクスと笑っていた。
「おう、任せろ。みんな兄ちゃんがやっつけてやる」
「兄ちゃん格好良い!」
叶うことの無い悲しい嘘だった。
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