一話 母とふるさと

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「ええ、まあなんとかね。夜になるとここら一帯は真っ暗になるし、山を越えてはこんね」 「でも僕ら警報が鳴るたびに逃げらされるねん。最近は毎日」 「そうそう。鳴った途端先生が、各自逃げるように、解散。って言って一人でどっかいっちゃうねん」  ちびっ子二人も口々にそう言った。 「無責任な先生や」 「うん、仕方ないから近くの林の中に逃げるけど。多いときなんか一日二、三回はあるねん」  それは中々いい考えだ。自分が皆を連れて逃げているという哲夫の頭を撫でてやる。 「でもな、もうじき兄ちゃんがみんなやっつけてくれるんやろ?」  二人がキラキラした目を私に向ける。母さんもその傍らで嬉しそうにクスクスと笑っていた。 「おう、任せろ。みんな兄ちゃんがやっつけてやる」 「兄ちゃん格好良い!」 叶うことの無い悲しい嘘だった。
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