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「この際読み方はおいて、『心』と『愛』から考えるべきじゃろう」
とりなすように言った緑ローブも、困惑ぎみだ。
「それでも両方名詞じゃ。難しいぞ」
黄ローブは眉間にしわを寄せた。
「『心が愛にあふれた子』などどうかの……?」
そう言う緑ローブ自身、あまり良い案ではないと顔に書いてある。
「わしに任せい」
はっとして二人が見ると、紫ローブが自信満々に胸を張っていた。
「ココアというのは、ただ甘いだけではないぞ。寒い日に飲むココアは、人の身体も心も温める、そりゃあ素晴らしい飲み物じゃ!」
「……」
「……おぬし、ココア好きか?」
紫ローブは、照れたようにちょいとうなずいた。
いかつい親父のそんなところは、あまり見られるものではない。
「とにかく!良い案がある!」
「ふむ、聞かせてみい」
紫ローブは、おほんと咳ばらいをした。
「『心の温かい愛らしい子』でどうじゃ?」
「……少し贅沢な気もするが……」
「まあ、よかろ。他に案もなし」
よいぞ、と緑ローブが手を振ると、また白ローブの青年が高らかに宣言した。
「心愛ちゃんの運命を、『心の温かい愛らしい子』に決定します!」
次に現れたのは、また男の子。額の上には『玲音』。
「『れおん』と読むそうです」
白ローブが先回りして注釈を加えた。
「ライオンの意味のレオンであろうな」
「ならば『雄々しい子』でよかろう」
「うむ。漢字には意味がないと見える。『雄々しい子』じゃな」
再び、青年によって子供の運命が宣言され、新たな赤子が現れた。
額の文字は『聆諳』
「またレオンか……」
うんざりと赤ローブ。
「次は『勇ましい子』かの?」
「おお、それにしよう」
しかしながら、次の赤子もまた『レオン』。
「おい、どうなっとる」
白ローブは困り顔で言った。
「あと20人ばかり、同じ名前が……」
「みな、『雄々しい子』と『勇ましい子』じゃあかんかのう……」
「せめて、意味のある漢字を使ってくれたらの……バリエーションも増えるんだが」
「名前なぞ運命の一部にすぎん。あとの20人も同じ運命にしてしまえ」
黄ローブの無責任な意見に、しかし誰も反論しない。
みな、うんざりしていたのだ。
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