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水汲みを済ませたおむらは、命じられるままに次々と雑用をこなした。
その間にも、他の女中の非好意的な視線を気にし、女中頭の厳しい目にぶつかる度に激しい緊張に襲われた。
おむらの気が休まるのは、家中が寝静まった後、ひとりで手水に行く時間だけだった。
奉公に来たばかりの頃は、怖くて、とても夜に外に出るなどという事は考えられなかったが、一度覚悟を決めてしまうと、独り占めの夜は素晴らしいものになった。
昼間は騒がしい屋敷から、物音が消える。
月夜には、木々に不思議な白い影ができる。
忘れていた虫の音や季節の空気感が感じられる。
何より『独りきりである』という事に、おむらはえも言われぬ安心を得るのだった。
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