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俯き気味だった顔が、こちらを窺うように遠慮がちに上がった。
やっぱりその瞳は、今にでも溢れんばかりの水を含んでいた。
(そういえば最近、泣いてるとこ見てない気がする。)
いつ以来かな…。
思い浮かぶのは幼い顔の彼。
その侠ちゃんが目を細める。
眩しい、かな?逆光で。
(わざとだなんて、貴方は考えもしないのかな。)
この計画は、俺が平然と見えなきゃ意味がない。
だから逆光を使って表情も顔色も見えないようにした。
ま、ここまでしなくったって、鈍いアンタぐらい騙せる自信あったけどね。
これでも一応。
劇団ん中じゃ期待の大型新人俳優って言われてたんだから。
でも変なとこで鋭いから、貴方。
念には念を。
(あぁ、あと少し…あと少しで夢が叶うとこだったのに)
……さて、と。
最愛の貴方に、最悪をしてあげる。
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