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「俺さ、幸せ過ぎるの嫌いなんだ」
(えっ…)
目を見開いて、固まった。
「侠ちゃんと付き合ったのだって、なんとなくだしね」
…そっか。
なんだ、そうだったのか。
俺は1人で両思いだと勘違いをして、1人で浮かれてただけなのか。
「それにさ」
なんでだろ。
“聞くな!”って、本能が危険信号を出してる。
なのに何もしない俺はただの馬鹿。
「俺やっぱり、女がいいや」
脳天を重く固い鈍器で殴られたような、そんな衝撃。
真っ黒になる視界。
真っ白になる頭の中。
途切れそうになる意識を繋ぎとめきれない。
ズボンの上から足をつねる。
(痛、い…)
痛みが、これが現実のものだということを表している。
「俺の部屋にある物、送っとくから」
もう、部屋に行くことすら許されないんだね。
「じゃ、バイバイ、侠佳さん」
別れの言葉ですら素っ気ない。
らしいけど。
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