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それは、確か小学4年の夏だった。
夏休みを利用して、遠方の親戚の家に遊びに行くのが一番の楽しみだった。
「お母さん、お散歩行ってくるねー。」
「遠くまで行かないで、遅くならないようにね。」
「はぁい。じゃあ、行ってきまーす。」
通い慣れた道を上って、裏山へ向かう。去年、見つけた秘密基地を確かめる為だった。
「あった。…あれ?」
秘密基地とは名ばかりの小さな洞穴。その前に先客がいた。同じ年頃の男の子。
僕らはすぐに仲良くなった。地元の子らしい彼は『シュウヘイ』という名前だった。
「明日はかくれんぼしような。」
「うん、いいよ。じゃ、また明日。」
傾いてきた太陽に、僕らはそんな約束をして別れた。
うちに帰ってその話をすると、なぜかちょっと不思議そうな顔をされた。
「お前みたいに、遊びに来てる子がいるかもねぇ。」
祖母がそう言って、その話は終わってしまった。
次の日、僕は再び裏山に行った。シュウヘイはもう来ていて、約束通り“かくれんぼ”をしようと行った。
ジャンケンで負けた僕は鬼になり、近くの木に両腕をつけ、顔を伏せた。
「いーちっ、にぃーっ、さーん…」
何の気配もしなかった。
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