8人が本棚に入れています
本棚に追加
ダンスは必ず男子が誘う。手を差し出して、お辞儀をして。こう言う。
「一緒に、踊っていただけますか?」
目の前に、あったかそうな大きな手。驚いて顔を上げると、いつも遠くに見ていた顔が真上にあって。
どうしよう、どうしよう、この手をとっていいのかしら?
「俺の事、嫌い?」
自信なさそうな小さな声と、困ったような怒ったような、泣き出しそうな…初めて見る表情で。顔、赤い。
「嫌いじゃなければ、一番に踊って欲しいんだけど。」
多分、私も同じような顔をしてる。けど。
「…ありがとう。」
震える手を、そっと重ねたら、大きな手が強く握ってくれた。
それからずっと、この手はつないだまま。
〈end〉
最初のコメントを投稿しよう!